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2019.10.18
著作権者は,その著作物を,公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し,又は演奏する権利を専有する(上映権・演奏権。著作権法第22条)。
日本音楽著作権協会(JASRAC)は,平成30年4月1日,音楽教室から著作権料の徴収を始めました。対象となるのは,楽器メーカーや楽器販売店が運営する全国7000を超える音楽教室。これに反発する音楽教室の指導者らが,JASRACを相手に訴訟を提起する事態が生じています。みなさまの中にも,ご自身が楽器を習っていたり,お子様を大手音楽教室に通わせたりしていて,この裁判の行方を注視している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
裁判の主な争点は,冒頭の「演奏権」の要件のうち,①音楽教室の生徒が「公衆」にあたるか,②レッスンで教えるための演奏が「直接聞かせることを目的」とした演奏にあたるか,の2点。そこで検討すると,争点①,講師と1:1(or少人数)でレッスンを受ける生徒は「公衆」たり得ない?いいえ,著作権法上の「公衆」は,特定かつ多数を含むと定義されています。広く一般に随時募集される音楽教室の生徒は「公衆」といえそうです。では,争点②,講師の模範演奏は「聞かせることを目的」にしていない?たとえば生徒が苦手なワンフレーズを講師が弾いてお手本を示す・・それは「聞かせることを目的」としているかも?・・見解が分かれそうなところです。
この問題,法律家としては,非常に興味深い裁判ではありますが,自称素人音楽家(私)の視点に戻ってみると,なんとも悩ましい。著作権者が正当な対価を取得する仕組みを整えることは当然必要ですが,著作権料徴収にともない,月謝が上がるかも!練習曲がパブリックドメイン(いわゆる著作権切れの曲)ばかりになるかも!など不穏な噂を聞くと,不安にもかられます。いずれにしても,心豊かに音楽活動(教育)ができるよう,裁判の行方を見守るばかりです。
弁護士 梅森 史子