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それって✕✕ハラスメント?

2020.01.31

 最近,ニュースなどでよく耳にすることば,「ハラスメント」。地位や権力などを背景に相手に嫌がらせを行う「パワハラ」や,男女を問わず性的な嫌がらせを行う「セクハラ」などはすでに社会問題化しており,みなさんもご存じのことでしょう。
 これに,「オカハラ」(旅行に行く人に対してお土産のお菓子を強要する),「カラハラ」(接待や飲み会などのカラオケで歌いたくない人に歌うことを強要する)など、市民権を得たかどうか微妙なものも合わせると,ハラスメントの種類は,30とも40とも言われているそうです。もはや,現代社会はハラスメントでいっぱいです。
 このような社会情勢を受け,パワハラを防止するための対策を企業に初めて義務付ける法律が,令和2年6月(中小企業については令和4年度)から施行されます。
 厚生労働省によれば,パワハラに該当する事例として,①身体的な攻撃(熱々のカレーを無理矢理食べさせるなど),②精神的な攻撃(ほかの労働者の前で威圧的に叱責するなど),③過大な要求(業務上明らかに達成不可能なノルマを課すなど),④過小な要求(程度の低い単調な作業を与え続けるなど),⑤人間関係からの切り離し(長期間にわたり別室に隔離する,自宅研修させるなど),⑥個の侵害(病歴などを本人の同意を得ずにほかの労働者に曝露するなど)の6類型に整理しました。
 もっとも,上記6類型は,それ自体明らかなパワハラと言えるでしょう。他方,行為者が「正しい指摘をしただけだ」とか「これは愛ある指導の一環だ」と思っていても,受け取る側の認識がそうでないことは日常生活でもよくあります。また,同じ言動であっても,人によっては,精神的・身体的苦痛を与えられたと捉えるかもしれないし,そうでないかもしれない。こういったグレーゾーンが割と広く想定できる点が,ハラスメント問題の難しいところではないでしょうか。
 私たちは,ハラスメントの被害者にもなり得ますし,加害者にもなり得ます(会社の場合は,使用者責任や職場環境配慮義務違反を問われる可能性もあります)。被害者になったらどうするか。弁護士に相談です。特に,パワハラが原因で失職したり罹患したりした場合には,裁判も検討しなければなりません。たしかに,近年,ハラスメントを認める裁判例は増えつつあります。しかし,そのための証拠集め,因果関係等の立証は,容易ではないからです。
 では,加害者になったらどうなるか。「ハラスメント」は,その立証がされれば,不法行為に基づく損害賠償請求など,民事責任を問われることになります。また,行為態様によっては,暴行罪,傷害罪など刑事罰の対処となります。社会的責任は,決して軽いものではありません。日頃から相互に意思疎通をはかり,相手方の人格を傷つけない指導のあり方,人との接し方を模索していくことが必要ではないでしょうか。

弁護士 梅森 史子

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