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2018.08.17
様々な事情で,親がおらず又は親から離れて児童養護施設等で入所している子ども達がいます。児童福祉法では,18歳未満を「児童」としており,原則として,子ども達は高校を卒業する時点で,それまで生活してきた施設を退所しなければなりません。児童福祉法では,退所後の児童の支援も児童養護施設の目的とされています(法41条)。
私は,児童養護施設を退所した子どものアフターケアを行ってきました。具体的には,施設退所前から,退所後の生活・進路を準備できるよう,施設の職員と協力しながら,本人との信頼関係を構築しつつ,一つ一つの問題を解決していきました。私が担当した子どもの一人は,高校を卒業後,大学への進学を希望していました。
大学受験をするためには,受験料,合格後には入学金・前期授業料等が必要になります。通常は,滑り止めの大学を受けることが多いと思いますが,そうなると2倍以上のお金を大学入学までに準備しなければなりません。
現在,施設退所後の児童の進学支援として,各種給付型の奨学金等の制度が増えていますが,そのほとんどは,大学入学後に給付されます。ましてや,複数校の受験に対応してもらえるものはほぼありません。そのため,子ども達の貯蓄が間に合わなければ,結局,誰かが立替を行わないと,子ども達の進学は実現できないことになります。
貯金ができていないことを子ども達の自己責任としてもいいのか,進学をするための努力をせよという意見もあるかもしれませんが,そもそもそのような現状に至ったのは,子ども達自身の責任ではないでしょう。
施設退所後の児童に対する進学支援として,大学入学前の支援をさらに整備しなければ,金銭的事情で夢をあきらめてしまう子どもを減らすことはできません。こういった点も含め,今後も,さらなる児童福祉に対する支援が拡大することを望みます。
弁護士 中谷 彩