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不正のトライアングル

2019.11.22

 皆様は,「不正のトライアングル」という言葉をご存じでしょうか。これは,犯罪学者のドナルド・R・クレッシーが提唱した理論で,組織内での不正行為は,①機会,②動機,③正当化という3つの不正リスクがすべてそろった時に生起するという考え方です。今春,私は公認不正検査士という資格取得のため久しぶりに受験勉強なるものをし,様々な不正の手口,不正の存在を発見するための調査手法や,組織内での不正を防止するために必要な対策などを本格的に学びました。その中から今回は,この「不正のトライアングル」という言葉をご紹介したいと思います。
 まず①機会とは,不正行為をやろうと思えばいつでもできる(見つからないと考えられる)ような職場環境があることを指します。例えば,一人の経理担当者に権限が集中している場合や,上司のチェックが形骸化している(中身を確認せずに承認の判子が押される),あるいは自分自身が承認者である場合などがこれに当たります。第三者のチェックが入らないと,不正が行われる可能性は高くなってしまいます。
 次に②動機。不正行為を実行することを欲する主観的事情のことです。他人には言えない金銭的な問題を抱えている,自分では達成できない(と思われる)高い目標を課されている(プレッシャー)など,心理的に追い込まれた状態になると,人は不正に走りやすくなります。
 そして③正当化。クレッシーは,犯罪を行う前にはそれを正当化する事情が必要だと言います。会社に貸しがある,経営者だって不誠実なことをしている,自分は正当な評価をされていないと思っているなど,会社に対する不満から自分を正当化するもので,こういった考えが生まれるかどうかは会社の組織風土や法令遵守の状況に左右されます。
 もちろん,これだけですべての不正行為を説明できるわけではありませんが,不正の防止策を考える際にはこの3つの条件をひとつずつ排除していくことが肝要です。
 一番効率的なのは①機会の除去でしょう。不正を行っても確実に発覚すると社員が認識すれば,不正を起こそうとはなかなか思わないものです。例えば,業務フローを改善して,一人で業務が完結しないようにする,定期的又は臨時に在庫や現金等の点検を行う,一週間程度の長期休暇制度を設けて,通常の担当者とは違う従業員が業務を処理する機会を設ける,などの取り組みが考えられます。
 公認不正検査士とは,組織内で発生しうる不正の防止・抑止のための取り組みに関する専門家として,アメリカで創設された国際的な資格です。我々の日常業務にも通じる知識を得られましたので,より良い法的サービス提供のため,おおいに活用していきたいと考えています。

弁護士 井上 彩

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